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株式会社ビッグフット くんぺい事業部

さだ まさし Masashi Sadaprofile

『やんちゃでいたずら好きで照れ屋でロマンチストで好奇心が強くてアイデアマン』という魔法ばなし

 去年、僕は生まれて初めて子供向けの本を出しました。少年時代の故郷の夏祭りの晩の、弟と妹と風船をめぐるささやかな物語で、実はこの本に東菜奈という人が素晴らしい挿し絵を描いてくれたのです。

 そう、君平さんのお嬢さんです。彼女が僕のコンサートに現れたときのことは今も覚えています。

ある日スタッフが「まさしさん、『東君平』という人を知っていますか?」と訊きました。

「もちろん知っている。若く亡くなった詩人、童話作家、画家だよ。『詩とメルヘン』で『くんぺい魔法ばなし』というのを書いておられた。もちろんお目にかかったことなどないけれど、僕は青春時代、大フアンだったんだよ」

 と言うと、

「そりゃあ良かった。今夜お嬢さんが聴きに来られますよ」

 と言います。

 へえ、と思いました。

 君平さんのイメージは『永遠の少年』。

 やんちゃでいたずら好きで照れ屋でロマンチストで好奇心が強くてアイデアマン。

 僕はそういう人になりたいと思っていたのだが、君平さんは「思っている」んじやなくって、そういう人、のような気がしてた。

 もちろんお目にかかったことなどないのだから、勝手な押しつけはよろしくないが、僕の中では「確信」に近い信頼がありました。

 ところが《君平さんのお嬢さん》というイメージが湧かない。君平さんが少年なんだから、お嬢さんは【もっと少女】だろう、と矛盾したイメージでぼうと考えていたのです。たとえば小学生。その子はいつになっても小学生。そんな子が君平さんの子供にふさわしい。でもそんな【少女】がさだまさしのコンサートに来たがるのは不思議だなあ、と。

 そうしたら、突然妙齢で美人で淑女が現れた。それが菜奈さん。

 考えてみりゃ、君平さんの歳から考えて、それが当たり前なんだが、どうにも君平さんは魔法使いみたいなところが印象に強くってそういう錯覚をしたわけでした。

 ところがその後何遍かお目にかかるうち、菜奈さんという人が見えてくると、やっぱりこの人は【少女】だ、と確信する。揚げ句、松本のコンサートに君平さんの奥様つまり菜奈さんのお母様が現れた瞬間、お母様のほうがもっと【少女】だと知りました。これで僕は大いに納得をしたのです。

 東君平はやっぱり魔法使いだった。

 奥さんにも娘さんにか魔法をかけていた。

『やんちゃでいたずら好きで照れ屋でロマンチストで好奇心が強くてアイデアマン』という魔法。

 君平さんは「君平さん」と呼びかけたくなる人懐っこさがあります。それはもちろん人柄にもよるのだろうが、まずは作品の人懐っこさにあるのです。人懐っこさの正体はリズムです。「君平さん」の凄さは、リズム感の良さなのであります。実は、(このことに気づいている人はもの凄く少ないのであんまり他で言いふらしてほしくない僕だけの発見なんだけど・笑)言葉は揺るぎない個々のリズムを持って生まれてきているのです。このことを直感と才能とで無理なく「発揮」する人がときどき現れる。君平さんはそういう珍しい「音感」の人なのでした。ああ、彼がもう十年遅く生まれていたならきっと、もの凄いシンガーソングライターになっただろうなあ。君平さんの作品に流れるものは『痛み』と『癒し』です。そうではない、という人もあるかもしれないから、誤解を避けるために言い直そう。僕の好きな君平さんの世界は……と。

 人の心がどんなに傷つきやすく、どんなに生きることが切ないかを知っている人。でも、嘆いたり、泣き叫ぶことばかりがそれを救ってくれるわけではない、ということも知っている人。案外ひとは意地悪だけれど、案外ひとは暖かいってことを知っている人。笑いやちょっとした人生の工夫が、ひとのこころを豊かにしてくれたり、元気にさせてくれるってことを知っている人。そんな君平さんがシンガーソングライターだったら、聴いてみたかったなあ、と本当に思う。『やんちゃでいたずら好きで照れ屋でロマンチストで好奇心が強くてアイデアマン』が、どんなふうに人の心の寂しさや哀しみを、暖かさや笑いで《元気》にすげ替えてくれるか、聴きたかったなあ、と思う。

 君平さんの言葉は「作ったもの」ではなく「湧き出たもの」だから、ときどき人を泣かせます。

 たとえば『おはようどうわ』の「あめふり」の一節。

「だれかのことが、しんぱいになるときは、じぶんが、しあわせなときなのです」

 君平さんは、凄い。


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敬称は省略させていただきました。